信徒の召命と使命について(中-3)

第2バチカン公会議(1962-65)は、「ニカイア信条」を制定したニカイア公会議(325)、「ニカイア・コンスタンティノポリス信条」を制定した第1コンスタンティノポリス公会議(381)、「カルケドン信条」を制定したカルケドン公会議(451)、そして、
①ニカイア・コンスタンティノポリス信条を信仰の基礎とする。
②聖書と聖伝は、福音の「救いの真理と道徳律の源泉」であり、ウルガタ訳聖書を公式聖書とする。
③宗教改革者たちは、原罪によって人間は根底から堕落し、その自由意志は失われたと教えているが、人間の本性は全面的に腐敗したわけではない。
④信仰にのみではなく善行による功績も、神が人を義とする不可欠の条件である。
⑤秘跡は七つである。
⑥司祭職志願者は剃髪を受け、守門・読師・祓魔師・侍祭・副助祭・助祭・司祭となってゆく。
⑦ミサはキリストの十字架の犠牲の記念であり再現である。
⑧聖別によってパンと葡萄酒は聖体に変化する(実体変化)。
⑨免償、聖人・聖遺物・聖画像の崇敬、煉獄の教義は斥けない。
などの項目を決議(再確認されたものも含めて)したトリエント公会議(1545-63*52-61は中断)、教皇の教導職の不可謬が宣言された第1バチカン公会義(1869-70)のように、特定の教義こそ制定しなかったが、採択された四つの憲章、九つの教令、三つの宣言からなる公文書によって、まさに「教会の神秘をより深く究明した今、ためらうことなく、教会の子らとキリストの名を呼ぶすべての人々だけでなく、全人類に話しかけ、現代世界における教会のあり方と取り組みについてどのように考えているかをすべての人々に明らかにし」
(『現代世界憲章2』)ました。

教皇パウロ6世は、第2バチカン公会議の閉会の一日前、1965年12月7日に使徒憲章『Mirificus eventus ミリフィクス・エヴェントゥス』を発表し、1966年1月1日(神の母聖マリア)から5月29日(聖霊降臨)までを全世界の教区において「特別聖年」(注一)とし、公会議の教えが全信者に余すところなく及ぶよう促しました。

高見三明大司教は『第2バチカン公会議公文書 改訂公式訳』の「総序」のなかで、公会議の意義を、「教会の刷新」と「世界との対話」に大きく二つに分けています。「教会の刷新」は七項目、「世界との対話」はニ項目からなります。多く、それを抜き書きし、引用します。*は便宜上、私が付けました。数字はアラビア数字で統一しました。文中の太字は私がしたものであり、途中の<>内の文は、私が書いたものです。

教会の刷新
①典礼の刷新
*いわゆる「背面形式」から「対面形式」のミサに変わり、言語がラテン語から各国語に変わる。
*時代とともに飾りの多くなった祭儀を本来の姿に戻し、信者がそこで行われる神秘に積極的に参加できるようになった。
②機構改革
*検邪聖省を教理省と改称して、「禁書」を廃止した。「聖省」が「省」と改称された。省の長官とメンバーの任期は5年とされた。枢機卿(注二)は75歳で任務を解かれ、80歳で教皇の選挙権を失う。
*キリスト教一致推進事務局、諸宗教者連絡事務局、無宗教者事務局を常設のものとした。
③教皇と司教の協働体制
*司教は使徒の後継者であり、団体として使徒団を継承する。各司教は、それぞれの「部分教会(教区)における一致の目に見える根源であり、基礎である」(『教会憲章』23)。全教会の司教団は頭であるローマ教皇と一致と交わりのうちに〝協働して〟(collegialitas)教え、聖化し、収める(『教会憲章』20-21)。
*教皇パウロ6世は、公会議の体験によって生まれた積極的な精神を生き生きと保つために「世界代表司教会議」(注三)を設置した。
*教皇パウロ6世は、1966年の自発教令『エクレジエ・サンクテ(Ecclesiae sanctae)』をもって、各国あるいは各地域に恒常的な司教協議会の設立を命令した。日本では、1966年5月に日本カトリック司教協議会が結成され、諸司教委員会が編成された。
*アジア司教協議会連盟(Federation of Asian Bishops,Conferences=FABC)は1972年に発足し、2012年現在19の司教協議会で構成されており、4年ごとに総会が開催される。
*ローマ教皇が「司教たちの一致と信者の群れの一致との恒久的かつ目に見える根源であり、基礎である」(『教会憲章』23)ことには変わりはないが、画一化ではなく、各地域教会(教区)の主体性や各文化の価値を認め、多様性における一致<私たちの教区長、菊地功大司教は、この言葉をモットーとされています>が掲げられたのである(『教会憲章』13、『現代世界憲章』53-62)。
④教会の構成員
*司教、司祭は、叙階の秘跡によって聖別され、頭・牧者としてのキリストにかたどられて、その祭司職にあずかる。司教は、その叙階の権能および任命の権限によって「祭司職」を十全的にもっており、司祭は、自らの司教に従属し、協力する者である。(『教会憲章』21、28)。『教会憲章』28は、さらにこうも言っています。「司祭は、司教職にとっての賢明な協力者、その助け手、道具であって、神の民に仕えるために召され・・・」とも。
*「信徒とは、聖なる叙階を受けた者ならびに教会において認可された修道身分に属する者以外の、すべてのキリスト信者」、すなわち「洗礼によってキリストのからだに合体され、神の民に組み込まれ、自分たちのあり方に従って、キリストの祭司職、預言職、王職に参与する者となり、教会と世界の中で、自分たちの分に応じて、キリストを信じる民全体の使命を果たすキリスト信者のことである」(『教会憲章』31)。これによって、高見三明大司教は、「公会議が、すべての受洗者は祭司である民として、宣教と聖性に招かれていることを明らかにしたところから、いくつかの危機が生じた。役務的祭司職は、共通祭司職の再発見と司教職の再認識によって影が薄くなり、1970年代に多くの司祭が還俗した」と述べています。役務的祭司職の司祭の働きたるや、その責務は大なるものです。また、高見三明大司教は、この項目のなかで、「日本における宣教会の会員は、1960年代をピークに召命が減少し、修道女会も2000年代から著しく会員が減少し、高齢化が進んでいる。時代の変化と将来に対応するための方策を模索している」とも述べています。
⑤聖書司牧
*公会議は、聖職者だけでなく修道者も信徒も、つまりすべての信者が、聖書を祈りながら読み、その教えを生活の場で実行するよう強く勧めた(『神の啓示に関する教義憲章』22,25)
⑥エキュメニズム(注四)
*教皇と、分かれた諸教会の指導者との出会いが増え、とくに聖公会とルーテル教会との間で公式または非公式の対話から多くの重要な文書が生まれた。
*教皇庁キリスト教一致推進評議会が1993年に『エキュメニズム新指針』を発行した。共同の祈りや正義と平和のための活動は行われているが、完全な交わりの確立に関する教義的な条件はまだ満たされていない。
⑦その他の重要な文書
*1983年には『カトリック新教会法典』、また1992年には、『カトリック教会のカテキズム』が公布された。さらに『カトリック教会のカテキズム要約』が2005年に公布された。
世界との対話
①社会教説
*教会は、キリストに倣って、人間のいのちの尊厳、共通善、この世の物は万人のためであること、補完性の原理、連帯性などの原理に基づいて、人間世界とかかわり、その平和と幸福のために奉仕しようと努める。とくに「小さな人々」の代弁者となって、彼らの権利を擁護する(『教会憲章』23、『司祭の役務と生活に関する教令』6、『修道生活の刷新・適応に関する教令』13、『信徒使徒職に関する教令』8)。
②諸宗教対話
*まず、だれもがもっている信教の自由と権利は尊重されなければならない(『現代世界憲章』26-27、『信教の自由に関する宣言』2)。
*キリストを知らない人々の救いについていえば、神は、自分の良心に従って真面目に生きようとする人を救うことができる(『教会憲章』16)。
*宣教の使命は厳然と存在しており、教会はそれに邁進しなければならない(『教会憲章』16-17)。

第2バチカン公会議によって、教会の何が刷新され、世界に向かって何が推進されていったのか。50年を経たいま、あらためて「第二バチカン公会議が打ち出した指針に基づいて、わたしたちはキリストにおける希望をもって愛を実践しつつ信仰を生きていかなければならないのです」(『第二バチカン公会議公文書 改訂公式訳』刊行にあたって 日本カトリック司教協議会会長 池長潤)。
(続く)

(注一)聖年 *ラテン表記でjubilum 「喜びの年」を意味し、平和の実現を意向して祈る一年のこと。免償が与えられる。レビ25.9-10の「ヨベルの年」の考えに基づく。1300年、教皇ボニファティウス8世がその年を聖年としたのが最初で、1450年以降25年ごとに行われている(「通常聖年」)。他の意向による「特別聖年」もあり、2000年は特に「大聖年」とされた。
(注二)枢機卿[ラ]Cardinalis 教皇に次ぐ高位の聖職者で、顧問として教皇を補佐する。教皇によって任命され、教皇庁の長官などの行政における要職にあたる。教皇選挙権を持つ。人数に制限はなく、1962年、聖ヨハネ23世によって、選出されるのは司教に限られるようになった。邦人では、土井辰雄、田口芳五郎、里脇浅次郎、白柳誠一、濱尾文郎(いずれも故人)、現在は、前田万葉大司教が、教皇フランシスコの命によって、2018年6月28日より、この任に着いている。
(注三)世界代表司教会議(シノドス[ラ] SynodusEpiscoporum) 「シノドス」とは「ともに歩む」という意味のギリシャ語である。「教皇と司教間の緊密な関係を助長し、信仰及び倫理の擁護と向上、教会規律の順序及び強化のために助言をもってローマ教皇を補佐する。また世界における教会の活動に関する諸問題を研究する」(『カトリック新教会法典』342-348)ため「世界の異なる地域から選出され、かつ、一定時に会合する司教たちの集会である」(同)。
(注四)エキュメニズム[英]ecumenism  宗教改革以来、キリスト教同士でむしろ反目し合っていたカトリック教会とプロテスタント諸教派、聖公会、正教会との話し合いが真剣に持たれ、相互理解と共通点の確認への努力が積み重ねられています。これは「エキュメニズム」(教会一致運動)」と呼ばれます。(『カトリック教会の教え』対話と宣教)

<引用・参考文献>
「新共同訳聖書辞典」木田献一・和田幹男監修 キリスト新聞社 1997年
「岩波キリスト教辞典」大貫隆・名取四郎・宮本久雄・百瀬文晃編集 岩波書店 2002年
「カトリック教会のカテキズム」日本カトリック司教協議会教理委員会訳・監修 カトリック中央協議会 2002年
「カトリック教会の教え」新要理書編纂特別委員会編集・日本カトリック司教協議会監修
カトリック中央協議会 2003年
「カトリック教会のカテキズム要約」日本カトリック司教協議会教常任司教委員会監訳
カトリック中央協議会 2010年
「聖書」フランシスコ会聖書研究所訳注 サンパウロ 2013年
「第二バチカン公会議公文書・改訂公式訳」第2バチカン公会議文書公式訳改訂特別委員会監訳 カトリック中央協議会 2013年
「Pax Domini 2018年春号」「同夏号」「同秋号」カトリック青梅教会広報部 2018年

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